つなぽんのブログ

生物学者♀のたまごつなぽんのポスドク日記。

ボスとの不和を乗りきれるか? 〜学内ハラスメントの話〜

今日のテーマはちょっと暗いお話です。

 

「研究室ではボスが絶対!ボス(教授)の言うことを聞かないと学位をもらえない」

という話をよく耳にします。私が学部生時代は、半信半疑でこの話を聞いていました。

 

が。実際に大学という場に身を置いて10余年…。ボスとの関係がこじれると学位がもらえないというのは、少なからずあるものなんだな、と実感しています(^ω^;

いや、ほとんどの教授は学生に学位を取らせようと頑張っていると思うのですが、そうでない研究室というのは存在するのだなと。学位を諦める学生を前に、無力感を募らせてきました。

 

自分の心の整理のためと、少しでも大学研究室のあり方を考える切っ掛けになればと思い、この記事を投稿します。

 

なお、本日取り扱うハラスメントについては男女の区別はないので、男性の皆さんにも関係があるものとして読んでいただければと思います。

 

研究室内で生じるハラスメント

ハラスメントという単語を聞いてみんながぱっと思いつくのは、セクシャル・ハラスメント、いわゆるセクハラでは無いかと思います。

が、少なくとも、教授もスタッフも、セクハラに対してはかなり気を使っている印象を受けます。私の周りのコミュニティでは、セクハラが原因で学校に来れなくなった例は聞いたことがありません。(多少の際どい発言はありますが、セクハラに対する理解の広まりも手伝ってか、当事者や周りが「今の発言はダメでしょ」と言える空気があるように思います。)

 

研究室内で問題になるのは、セクハラよりも寧ろパワー・ハラスメントやアカデミック・ハラスメントに該当するものだと思います。こちらに関しては何度かその現場を目撃してしまいました。

 

一体どのようなパワー・ハラスメントが起こっているかというと、私が知っている範囲では以下の様なものを見聞きしました。生物系以外の研究室の話も含まれています。

 

  1. 学生に「学位を出さない/卒業させない」と脅す(メールを見せてもらいました。まじめに研究していましたが、彼氏との結婚を報告したことを堺にハラスメント被害に遭いました)。
  2. 学生の意思に反し、学振などの助成金の推薦を書かない (これは伝聞ですが、その研究室の学生は本当に誰も学振を出していなかったので怪しいと思っています)
  3. 学生の指導を行わない(論文投稿後リバイスが返ってきてから指導放棄された友人がいます)

 

怖い、ヤバイ\(^o^)/。

1. の被害にあった友人は学位審査以外の学位要件を満たしておりましたので、学位審査の審査員から指導教員を除外するという方法でギリギリ学位を取得して、今アカポスで働いています。3.の友人は論文が不採用となったために学位取得を諦めて、民間企業で働いています。

 

なお、人前で「君は本当に馬鹿だな」とか、「あったま悪いね〜、そんなんで学位取れると思ってんの?」とか高圧的に本人の人格を否定することを居る教授も居るのかもしれませんが、私はこの被害にあった人は見たことがないです。

 

研究を志す人はみんな頭が良いので、セクハラにせよパワハラにせよ、わかりやすく「ハラスメント」だと思われるような言動は行わないように思います。

むしろ、上の例で示したように、加害指導者と被害学生の二人の間で完結してしまうような、より周りに目立たない、表に出てこない形で深刻なハラスメントが発生しているケースが有るのでは無いかと考えています。

 

  

ハラスメントセンターが機能していない大学院の実態

上記のような事態になったら、(ブラックでない)一般企業であれば、ハラスメントセンターがうまく仲介して、部署替え、配置換えなどで対応するのでは無いかと思います(私は民間に行ったことが無いので想像です、すみません)。しかも、配置換え後も多少の給与の変動はあれど、給与は変わりなく支払われるはずです。(ですよね?)

 

大学でも同様に、ハラスメント被害に遭ったことが証明できれば、ハラスメントセンターが担当教員を変更することで対応する場合が多いです。

万が一の際の指導教員変更を円滑に進めるために、「副指導教員制度」を導入している学科もあります。

 

しかし、修士はともかく博士課程まで進んでからハラスメントに巻き込まれた場合、これを解決するのはかなり難しいです。

なぜなら、一つの大学が似たような研究テーマを取り扱う研究室を複数擁していることは殆ど無いので、指導教員の変更はすなわち研究テーマの変更を意味するからです。他大に似たような研究テーマを扱う研究室があったとしても、ハラスメントセンターが大学の垣根を超えて対応してくれる例は聞いたことがありません。また、同分野だと教授同士が仲が良かったり、教授間の力関係いろいろがあったりするのも面倒なところです。

 

学位を出さない、指導放棄、などの問題は、学位取得直前に問題が深刻化します。学位取得前となると27歳。そこから新たにテーマを変えて論文投稿となると。。。多分学位取得時には30を超えるでしょう。その間ずっと無給で学費を払い続けるのは現実的ではありません。

 

大学院でのハラスメントは

  1. 加害者となる教員が高度な専門性を持っているため換えが効かない
  2. 被害者となる学生は学位取得という切り札を握られているため非常に立場が弱い
  3. 研究室の変更で対応した場合にも、加害側である教員はほとんど被害を被らないのに対し、学生は経済的、時間的に甚大な被害を被る

 

という特長から、被害者の泣き寝入りになりやすい構造があるのです。辛い。

 

 

不幸な学生にならないために学生ができること

「大学の構造が悪い」「改革が必要だ」ということは簡単ですが、実際に被害にあった場合にはそうも言っていられません。学生ができる対策を未熟な私なりに考えてみたいと思います。

 

①研究室選びは慎重に

再三行っていることではありますが、研究室選びは慎重に行ってください。ちゃんと学生に学位を取らせる指導力がある研究室なのか調べましょう。研究室見学には必ず行ってください。

 

②自分の実力を上げ、指導者への依存度を下げる

これは難しいですが必要なことです。そしていつかは必ず克服しなければなりません。研究室配属された最初から、受け身で指導を受けるのではなく、「5年後には自分が独力で論文を出すんだ」という意識を持って研究に取り組むことが、自衛にもつながります。(私はそんなに意識高くはなかったですが。指導者に恵まれました。)

 

③研究の環を広げ、似た分野の他研究室や他大研究室にも顔を利かせておく

学会などに参加して、他研究室の知り合いを作りましょう。教授などとも話す機会があればガンガン話して交流を深めておくと良いと思います。お互いの研究内容を知っていれば、研究室を変更した際も対応がし易いです。万が一の事態には、大学の垣根を超えて「出向」という形で指導を受けられるかもしれません。

 

 

最後に

本エントリーを書くにあたって、ちょっと感情的になってしまって抑えながら書いたつもりなのですが、変なところがありましたらごめんなさい。

「研究室内で生じるハラスメント」の項目で挙げた例は、内容的にあまり具体的に書けることでもないので、信頼性が担保できていないと自分でも感じています。自分の体験ならば赤裸々に書くことができたのですが。

 

自分は本当に恵まれてラッキーなところで研究をさせてもらっているなー、と感じています。大学院での研究環境が改善され、学生が集中して研究に取り組める環境を作る一助になればと願っております。

(もし「大学院でのハラスメントの問題点」や「学生が取りうる自衛策」で他にまだ考えつくものがあったら、追記させていただくかもしれません)。

 

 

おわり

高校生に「生命科学者になりたいです」っていわれたら、「やめとけ」って言うと思う

前回のエントリー、たくさんの方に読んでいただいた様で驚いています。ほんとうに嬉しいです。ありがとうございます(*^^*)。

 

 

で、はてブコメントとかリツイートのコメントとかをさらっと読んでいて一つ、誤算に気づきました

 

 

このブログ、私の中で勝手に、理系、特に私と同じ生命科学の研究者を志す学生を読者として想定して書いていたんですよね。(ええ、プロフィールにもどこにも書いていないのですが。反省しています。)

 

でも、コメントを見ていたら、研究に携わらない分野の方々にもお読みいただいていることがわかりました。

それは本当に嬉しいです。あのエントリーが様々な分野の方の目に留まって、議論されたというのはブロガー冥利につきます。

 

これからも

「へー、生命科学者って、大学院ってこんなかんじなんだぁ。」

って、興味をもって見続けていただけたら(いや寧ろ研究業界を監視していただけたら)、研究者と社会がより良い関係を築けると思っています。

 

なので、ぜひ、分野外の方もどしどし見に来てくださいね☆

 

 

 

しかし、一つ、ちょっとまずいなと思ったことがあったのです。

それは、「研究者ってかっこいいー!」というあこがれを無駄に抱かせてしまったのでは無いかと思ったからです。

 

一応、「生き残れるかわからないよ」ってフォローを入れたつもりだったのですが、

私が「みんな研究者になろうよ、かっこいいよー」っていう感じで記事を書いたように受け取られると、ちょっとそれは本意ではないなと。

 

それで贖罪のつもりでこの記事を書くことに決めました。(生命科学研究者を目指す人にとっては、特に新しい情報はないと思います)。

 

  

私は研究者という職を人に勧めることは無いと思う

女性で研究者をやっていると、たまに「女子高生向けのサイエンス・カフェ」のようなものに呼ばれることがあります。

つまり、女子高生にサイエンスの面白さを伝えようという、大学側の一種のリクルーティングですね。

(この手の講演会は男子より女子向けのものが多い気がするのですが、何故なんでしょうか…(^ω^; 周りを見ていると女性でも就職が難航している人が結構いるので、喉から手がでるほど理系女子が欲しいようにも見えないのですが。)

 

私は研究周知活動(アウトリーチといいます)自体は好きなのですが、

相手が高校生で、リクルーティングの側面があるとなると二の足を踏んでしまいます。

 

何故かと言うと、女子とか男子とか関係なく、「研究者って人に勧められてなるもんじゃないでしょ」って、

私が思っているからです。

 

だって凄くリスキーだよ?お給料少ないよ?病んでった友達いっぱい居るよ?私の学年で規定年数で学位取れたの2/3位だよ?大学にストレートで合格したとしても学位取れる頃には27歳だよ?資格取れないよ?人の役にもあんまり立たないよ?

 

何でそんな職業、うら若き将来有望な高校生に勧めなきゃいけないんですか?

可哀想じゃないですか!

 

 

研究職はハイリスク 〜任期付きポスドクが辛い〜

これは、研究職を志した人なら大体了解している話なのですが、

とにかく研究者という職は不安定です。

 

大学を出て普通の企業に就職したら、大体定年まで雇い続けてもらえますよね?途中でクビになる可能性はありますが、少なくとも任期付きではないはずです。

 

が、学位をとった学生の次の行き先は、大体任期付きのポスドク(post doctoral fellowの略です、博士研究員とも言います)になります。任期は様々ですね。3年とか5年とか。

私は現在1年ごとの更新で雇ってもらっています。

任期が切れた後、助教やテニュアトラックなどの比較的安定した、任期の無い職につける人もいますが、ポスドク任期中に思うように業績を挙げられなかった人は、場所を変えて次のポスドク先を探し、再び任期付きの職にありつくことになります。

 

順調に学位とって27歳です。早くに就職して結婚した学部時代の同期など、子供を産んだりしています。

女性なら、まぁ子供欲しいなと考え始める頃ですが、任期付きとなると

 

「3年間で成果をださないといけないのに、いつ妊娠したら良いの?」

「育休とって、次の雇用先あるのかな?」

「一度職歴に穴が空くと、もう雇ってもらえなくなるかもしれない」

 

と、かなり不安になります(今の私ですね、はい)。

ちなみに、別の機会に紹介するつもりですが、子育て研究者の復帰支援のためのRPD(リスタートPD)という制度が存在します。内定率は26%程度です 採用状況 | 特別研究員|日本学術振興会 。

 

男性は男性で、「家族を養わなければ」と思う人が多いようなのですが、4年後に自分が働けるかわからないというのは精神的にかなり負担になるようです。そりゃそうだ。

 

実はそんなに給料が良くない

ポスドクの給料はそんなに良くないです。いや、いい人も居るのですが、あんまり良くない人もいます。(私の給料は、いくらとは言いませんが結構少ないです)。

 

目安としては、学振特別研究員-PD(狭き門です。採用率11%。)に内定した場合のポスドクの給与は、今は月36万です。多分。(違ってたらすみません。)

 

27歳で年収450万弱。悪く無いと思われる方も居るかもしれませんが、

修士から博士課程まで給料0で学費払っていますからね?

学振DC1 に採用されて3年で合計720万円もらえたとしても、学費と生活費考えたらトントンか赤字です。

多分普通に就職したほうが、給料としてはいいのではないかなー。

 

ちなみに、36万ももらえていない人もたくさんいます(私の給与はこれには到底及びません)。20万/月くらいのポスドクもいます。やっぱりかなりリスキーかなと思います。

 

(幸い、私の周りには無給ポスドクは存在しません。都市伝説だと思っているのですが、本当に居るのでしょうか???)

 

そもそも学位が取れるかどうかわからない

博士課程に進んだとして、学位が取れるかどうかはわかりません。

私の学年は、ちょっと正確に覚えていないのですが、確か15人くらい博士課程に進んで、学位を規定年数でとったのは8、9人くらいだったのでは無いかと思います。みんなまじめに研究していたのですけどね。

私は1年余計に博士課程に在籍して学位を取得しましたが、結局残りの5人は(お察しください)。みんなちゃんと大学以外の場所で働いてますけどね!

 

わかりやすく人の役に立たない

たまに友人の結婚式に出席するじゃないですか。

そこで、「新婦は、教師としてご活躍され、生徒にも慕われ 云々」とか、

「新郎は、〇〇保険で、事故の際にはお客様の立場に立って迅速に解決を云々」とか、

「本日のブーケは新婦ご友人のフラワーアレンジメントがご専門のの〇〇さんが 云々」とか

そういうのを聞くとね、やはりたまに考えます。

私は人の役に立ってないな、うん、全然人の役に立ってないな

って。

分かってて選んだ道ではあるけど、

やっぱり誰かの役に立つ仕事って、誰かに感謝される仕事って、素敵だと思うし、

そちらを選べるなら、そのほうが幸せだったんじゃないかと思うのですよ。

 

今、高校時代に戻れるなら研究者になるか?

こう聞かれると答えに窮してしまいます。ならないかもしれません。

普通に大学出て就職して、結婚して、子供産んでちゃんと整備された環境で育休をとって、旦那さんも研究者じゃなくてサラリーマンで、

毎月安定してお給料もらえる生活の方がよかったかなー、と思うこともあります。

 

今からでも転職しても良いのですが、それもできるのですが。

でも、私、中途半端が嫌なので。今やっている研究をほっぽり出して転職しようとは絶対思わないので、転職はしないかな。それにまだ知りたいことがたくさんあるし。

 

ここまで書いて、高校時代、あるいは大学時代に就職を選んでいたら、

「研究者になればよかったなー」

とやっぱりくよくよ悩んでいたのでは無いかと思いました。

結局、研究者になる運命だったんだな、うん。諦めよう。

 

研究者は特殊な職業

研究者って、芸術家とか、俳優とか、漫画家とかのように、結構リスキーな職だと思うのですよ。食っていけるかわからない。

お子さんが「私、漫画家になる」って言い出したら、とりあえず一度は反対しませんか?それでもし、その覚悟が本物だと分かったら応援してあげるけれども、なんとなくの憧れだけで漫画家になってしまったら、きっと苦労するから、とりあえず反対する親御さんが多いと思います。

研究者もそんな感じの職業じゃないかなー、と思っています。

誰にでもおすすめできる職業では無いですよ、憧れだけで来てはいけません、とお伝えしたくて、今日はこのエントリー書きました。

 

最後に、博士課程の恐ろしさがわかる一冊をご紹介しておきます。

私の周りは、この本の中身ほどはひどくない印象ですが。

博士課程進学は、よく考えてから行ってくださいね。

 

博士漂流時代  「余った博士」はどうなるか? (DISCOVERサイエンス)

博士漂流時代 「余った博士」はどうなるか? (DISCOVERサイエンス)

 

 

 

おわり

 

 

自分は研究者に向いていない? 〜研究者に必要な資質とは〜

「自分って研究者になれるのかな?」

「研究者に向いていないのかも…」

こういう疑問を持っている理系学生は多いのではないでしょうか。

私も学位取得前、しょっちゅうこの考えても仕方がない問題を考えていました。

そして未だに考えてしまいます。学位をとってお給料をもらっているので研究者になったのは間違いないのですが、

「私これからちゃんと研究者として食べていけるのかな〜。」

「最悪、転職すれば何かしらの方法で食べてはいけるかなぁ」

とかたまーに考えます。

 

私自身、まだまだこの難問とは長いこと付き合っていかねばならないと思うので、

偉そうにブログに書けるような立場ではないのかもしれませんが、

僭越ながら私の考えを書かせてもらおうと思います。

 

誰も見たことのない世界が見たいか?未踏の地に立ちたいか?

私が研究者に必要だと考える資質はたったひとつです。それは、

「まだこの世界のだれも知らないことを、自分の手で明らかにしたい」

という欲求です。

これを備えた学生であれば、研究室に入りたての時に多少論文読むのが下手くそでも、当初与えられたテーマをぜんぜん自分のものにできていなくても、

指導者の力次第で、「研究によって新たな発見をし、それを発表する」ことを自力でできるレベルまで持っていけると考えています。

 

この世の中に、科学に関わる職業というのは実にたくさんあります。

TVディレクターは優れた科学番組を作りますし、サイエンスコミュニケーターは一般大衆と研究者の架け橋になります。エンジニアは研究者が発見した事実や理論などをもとに、新しい製品を作ります。

どれもとても魅力的で無くてはならない職業ですが、前人未到の地の景色を見れるのは、そこに最初にたどり着いた研究者だけです。

 

「今、この世界でたった一人、私だけが知っている事実がある。

自分がそれを、この手で明らかにした。」

私はこの状況にものすごくワクワクします。

この現場に自分が立ち会ったことはほんの数回しか無いのですが、

(そして後から勘違いだったとわかることも多くあるのですが)

私にとってあの興奮は、他の何にも代えがたいものです。

もう一度、あの瞬間に立ち会いたいという思いが、私に研究を続けさせているのかなー、と思います。

 

 

論文を読むのがうまいからと言って研究に向いているとは限らない

論文を早く正確に読む能力や、多くの論文を読む能力は、研究者を目指すならいつかは習得しなくてはならない能力です。(私は未だにこれらは苦手ですが)

しかし、この能力は訓練によって習得できます。

一方、「自分がこの手で新しいことを発見したい」と思えるかどうかは、本人の資質によるところが大きいように思います。この欲求がない人は、研究に対するモチベーションを維持するのが難しいので研究者にはならないほうが幸せかな?と思います。

 

たまに、研究をしている途中で

「自分は過去に誰かが明らかにした事実を知るのが好きなだけで、自分で新しいことを発見したいわけではなかったんだなぁ」

と気づいてしまう人がいます。

私はこれは不治の病だと思っています。

一度消えてしまった研究に対する心の灯を再びつけるのは容易なことではありませんし、それが本人のためになるのかどうかもわかりません。

 

ちなみに、こういった学生に向いている職業は結構たくさんあります。特許庁とか、研究を支援する機構などに就職するとこの手の人達は輝けると思います。

 

研究に向いているか向いていないかを本人以外は判断できない

私が研究者に必要な資質として考えているのは、上記に書いた通り一つだけなので、

そしてそれは、本人の気持ちの問題であって他人が判断できる事柄では無いので、

研究に向いているか向いていないかを他人が判断することはできないと思います。

研究を続けたいと言っている学生に対して、指導者が「君、研究向いていないね」というのは、自分の指導力不足を学生側の責任に転嫁しているように私には聞こえます。

 

以前のエントリーにもちょこっと書きましたが、学生に「研究向いていない」と言うのは、「指導しても意味が無い」と考えていることの現れだと思うので、指導放棄といっても差し支えないのではないかと思いますね…。

 

ただ、指導が難しい学生というのはたしかに居るような気はします。例えばすごく不器用な人とかは、実験が多い研究は学生も教える方も辛いだろうなぁ、と思います。でも、そんな不器用な人でもバイオインフォマティクスなどのコンピューター生物学で輝けるのが、生物系の良いところです。

 

最後に

「自分は研究者に向いているか?」誰もが通る悩みだと思います。

たくさん悩んでください。私もまだまだ悩みます。

でも、「他の誰でもない、自分の手で新しいことを見つけたいんだ」って思うのなら、

とりあえず後ろを見ずに先に進んでみるのはどうでしょう?

新しい発見が待っているかもしれません。

私も含めて研究者として生き残れるかはわかりませんが  \(^q^)/

 

 

おわり

 

関連記事

 

tsunapon.hatenablog.com

 

 

ポスドクが考える研究室選びのコツその2 (生物・実験系・学位取得を目指すひと向け)

さて、今日は引き伸ばしに引き伸ばしてしまった研究室選びのコツその2です。

学位取得を目指す人に向けて書いたエントリーです。

研究室選びがなんで大事かは、昨日のエントリー

 

tsunapon.hatenablog.com

 をご覧くださいませ。

 

私が研究室を決める際に抑えたほうが良いと思うポイントは以下のとおりです。

私が考える研究室を決める際のポイント

  • 自分のやりたいことができるラボかどうか
  • 大学、研究機関の規模や質
  • 学位取得要件 〜生物系で学位要件が査読論文2報のところはやめとけ〜
  • ボスの年齢、定年までの年数
  • 研究室の規模 〜ビッグラボと小規模ラボのメリット・デメリット〜
  • スタッフ(特に助教)の人数と研究能力
  • 他研究室との交流があるか
  • 博士課程まで行った学生が学位を取得できているか、進路は?
  • 学生と話した時の感触

 

一個ずつ見ていきます。

 

自分のやりたいことができるラボかどうか

言わずもがなですが、まずはこれを第一に考えるべきです。

今後5年間付き合っていくテーマです。詳細に、具体的に研究テーマが決まっていなくても、漠然とした「自分が知りたいこと」が、ラボの「知りたいこと」と一致しているかどうかが重要です。

 

また、扱っている生物が何なのかも重要です。

モデルとしている実験動物によって、理解できる現象の程度が変わってきます。

マウスなどの高等動物を扱う場合、

  • ヒトとの相同性が高く臨床に応用できる可能性が高まる
  • 情動や社会性行動など、高度で複雑な現象の理解が深まる

というメリットが有ります。一方で酵母などを扱った場合には、

  • 酵母からヒトまで広く保存された生命に必須と思われる現象を相手にできる
  • 単細胞のため現象をシンプルに、より厳密に理解できる
  • 生活環が短く実験速度がはやい

などの利点があります(他にも色いろあるでしょうが)。また、非モデル生物を使う場合には、まだ誰もマークしていない思わぬお宝に遭遇することがあるかもしれません。自分がどのレベルの生命現象を、どの程度の厳密さで理解したいかを考えて決めると良いと思います。

 

もしもやりたいことがかなり具体的に決まっている場合には、

研究室見学の際に自分のやりたいことができるかどうか聞いてみましょう。

ボスがやりたいテーマを学生に割り振ってやってもらう研究室の場合、

自分の好きにテーマ設定ができない可能性があるので、

研究室を決める前に自分のやりたいことに対してボスがどう反応するかは探っておく必要があります。

 

大学、研究機関の規模や質

これもなかなか重要な要素です。

おすすめは、「できるだけ規模が大きく学位取得者を多く排出している大学に行く」ことです。

もちろん小規模大学にも良い研究をしている研究室はありますし、

「学部時代に育ててくれた恩があるので、規模の小さい大学だけれども院試をせずに残りたい」という人もいるかもしれません。

でも、いい大学には、良い人材が集まっています。一緒に研究する仲間は、お互いに刺激し合いながら研究の質を高めていく良き同士、ライバルになります

なるべく博士課程まで残る学生が多いところを選ぶべきだと思います。

 

規模の大きさも重要だと思います。一つには、しっかりとした学生相談室なりハラスメントセンターが設置されているという理由からです。

長い研究生活、変なトラブルに巻き込まれたり心が落ち込む可能性はどんな人にもあります。「自分だけは大丈夫」なんて思っては行けません。いざとなった時に駆け込めるところがきちんと設置されているところを選びましょう。

もう一つは、研究室が多いほど研究室同士の交流も多いという理由からです。他分野の研究を知ることは、自分の研究に対するモチベーションを上げてくれるだけでなく、思わぬところから新たなアイデアが生まれてきたりします。

後は、万が一研究室が合わなくて研究室を変えることになった時に、選べる選択肢が増えるというのも大きな魅力です。

 

 

学位取得要件 〜生物系で学位要件が査読論文2報のところはやめとけ〜

研究室を決める際には学位取得要件を先輩に聞いてみてください。

生物系の学科の多くは、学位取得の要件に「論文が査読付き英語論文雑誌に掲載される、または掲載予定になる」ことを定めています。Nature Cell Scienceが論文雑誌の最高峰ですね。

1本も掲載されなくても、学位審査さえ通れば学位が取得できる学科もありますが、多くの生物系学科では必要論文数は1本と定められているはずです。

で、極稀に査読論文2報を要求してくる学科があります。ここは絶対やめとけ

 

査読論文1本通すのも大変なのに、査読論文2報を5年間で載せなければならないとなるとかなりきついです。取りうる選択肢は2つ。

留年して在学期間を伸ばすか、しょぼ雑誌2つに投稿するか

です。

論文がどの雑誌に掲載されたかというのは生物学者にとってステータスになります。

絶対しょぼ雑誌で妥協するのはやめるべきです。

2本を1本にまとめて投稿したらもっと格の高い雑誌に出せるのに、

何が嬉しくて2本に分けて論文を書かねばならんのでしょうか?

 

ショボい2本より質の高い一本の論文を書いたほうが良いですよ。

どの大学のどの学科が何本の論文掲載を要求しているかは、ここに書くのははばかられるので自分で調べてくださいませ。

っていうか大学や学科によって学位要件変わるっておかしくねぇ?(ブツブツ)

 

ボスの年齢、定年までの年数

「定年まで後5年だからギリギリ学位取れるよー」という教授のラボはお勧めしません。ボスは、アカポス就職にも力を持っている場合が多いですから、

学位取得後すぐにほっぽり出されるより、数年間教授として在籍し続けてくれるボスのところのほうが安心して研究に取り組むことができます。

研究室の規模 〜ビッグラボと小規模ラボのメリット・デメリット〜

研究室の規模については、ビッグラボ、スモールラボ、双方にメリット、デメリットが有ります。

スモールラボの特長としては、

  • ボス自身が研究を指導してくれる場合が多い
  • 比較的若い研究主催者の元、挑戦的でわくわくする研究課題に取り組める
  • 研究室の成熟に貢献することができる
  • ボスの人脈が少ないために研究室が閉鎖的になりがちである
  • 構成員が少ないため、研究室内での考え方が偏りがちである

などがあげられると思います。周りの偉い先生達を見ていると、研究室立ち上げたての黎明期に、挑戦的な、リスクのある研究に果敢に取り組んでいって宝物を持って帰ってきた人が多い印象を受けます。一方、やや閉鎖的な空気になっているところも多く、一度人間関係がこじれると \(^o^)/ ヤバイ



ビッグラボの特長としては、

  • ボスはカネ集めに奔走しているためあんまりラボにいない
  • 研究自体は成熟しているため、次にやるべき課題が明確に定まっている場合が多く、リスクを取らない無難な研究をしている人が多い。(多分予算の関係?)
  • 能力のあるスタッフやポスドクが揃っている。
  • 他研究室や他分野との交流が盛ん
  • ボスの力でポスドク先を見つけやすい

などが挙げられます。まれにかなり挑戦的な課題に取り組むボスもいますが、多くは「守りに入っている」ひとが多い気がします。多分年齢のこととか、取ってきた予算申請のこととか、大人の事情があるのでしょうが子供の私にはちょっとわかりません。この研究室のいいところは、ボスの力でいろんな出会いを経験できることです。私はこちら側の人間ですが、本当にいろんな分野の先生方とお話する機会に恵まれて楽しい研究生活を遅れています。

あと、多少一部で人間関係が変なことになっても、スタッフが複数いるし、人と人とのつながりが小規模ラボに比べると希薄なのでなんとかなります。

 

どっちも魅力的だと思うので好きに選んでください。ただし、女性の学生には、研究主催者が男性のスモールラボはあまり勧めません。

真面目そうなボスに見えても、一歩距離のとり方を間違えると…\(^o^)/ ヤバイ

スモールラボは人間関係が密になりやすいので、ボス以外にもラボの構成員なんかと変な男女関係のもつれに発展する可能性があります。マジで気をつけてください。

 

スタッフ(特に助教)の人数と研究能力

実際、研究室に配属された時に一番密な関わりを持つのは多分助教とかドクターの先輩とかポスドクとかです。教授は大抵、お金を集めてくるために奔走していますので、直接指導を受けることは殆ど無いでしょう。

そうするとスタッフの能力はとても重要です。

研究室訪問時に色々聞いてみて、信用に足る人物か、研究遂行能力は十分そうか見極めましょう。

助教が筆頭著者の論文がちゃんと出ているかも確かめましょう(この辺は分野によるのでなんとも言えない部分もあるが)。

ちなみに、ラボから出てる論文のほとんどの筆頭著者がボス、みたいなところもありますが、こういう研究室はどうかと思いますね…。学生を筆頭著者として論文を出させてもらえるのか、とても不安になります。

 

他研究室との交流があるか

家庭でも研究室でも、閉鎖的で社会とのつながりのない場合は何か問題を抱えている場合が多いです。共同研究を積極的に行っているか、あるいは同じフロア内の学生同士、他研究室との交流がありそうかどうかを見てみてください。

共同研究を行っている研究室は私はかなり魅力的だと思っています。新学術領域研究とかで、いろんな分野の人と交流できるのは本当に楽しいしおすすめです。

 

博士課程まで行った学生が学位を取得できているか、またその進路

博士課程に行った学生が学位を取得できずに中退するということは、

教授に指導能力が無いことを表しています。

中には家庭の事情とか、他に夢が見つかったなどのポジティブな理由で学位を諦める人もいると思いますが、その数が多いようだと警戒対象です。

進路は、そのままあなたの将来の進路の参考になります。聞いてみましょう。

 

学生と話した時の感触

多くのブラックラボの学生は、「うちのラボはやめとけ」と言ってくれます。

楽しそうに実験しているか、自分が一緒に研究した場合に楽しく研究できそうか、

研究室に身をおいた自分の姿を想像しながら話を聞いてみるのが良いと思います。

同じフロアの複数研究室に見学に行って、「あのラボどう?」と聞くのもかなり有効な手です。

 

 

 

終わり。長くなってしまいました。読みづらかったらすみません。

実際入ってみないとなんとも言えないところもあるのですが、

少しでも参考になればと思って書いてみました。

ちゃんと吟味しても後悔することはありますが、吟味して選ぶことで、壁にぶつかった時に自分を納得させることができるはずです。

では良い研究室ライフをお送りください。


おわり

 

 

 

学位を取りたい人が研究室を途中で変えることによる時間的、経済的不利益の話  (生物・実験系・学位取得を目指す人向け)

まずはじめに、「つなぽんのブログ」を訪問してくださった方にお礼をば。

二日前の記事 (↓)に興味を持っていただいたようで、

たくさんの方が訪問してくださいました。ありがとうございます。

大学院教育の闇について、思うところはいろいろありますので、

その辺もそのうち書きたいと思います。 

今後もこのブログをちょくちょく訪問していただければ励みになります。

tsunapon.hatenablog.com

 

さて、昨日、研究者を目指す人向けの研究室選びのコツについて書こうと思っていたのですが、その前に、「簡単に研究室変えられないぞ」ということを説明しようとしたら思ったより長くなってしまったので記事を分けました。

「研究室選びのコツ」待っててくれた人がいたらすみませんが明日こそ書きますのでしばしお待ちを。

タイトルを「アカポスを目指す人向け」とか「研究者を目指す人向け」とか書こうと思ったのですが、現在自分は学位取り立てでそんな偉そうに「研究者」とかいう資格が無いと思い直して「学位取得を目指す人向け」にしました。これなら嘘偽り無い(汗)。

 

 

学位を取りたい人にとって研究室選びはなぜ大事か、どれくらい大事か

研究室選びは、研究者候補生たちにとって今後の研究人生を運命づける非常に重要な人生の岐路です。この時に選んだ研究が後々の自分の研究人生の基礎になります。

この研究室選びを失敗してしまうと、研究者として重要な若くて体力のある期間を無駄にしてしまったり、最悪学位取得を諦めねばならなくなることもあります。

だから研究室を選ぶその時に、本当によくよく悩んで研究室を選んで欲しいのです。

 

修士から5年間(+α)はほぼ研究室での時間があなたの人生になる

大学院修士課程を受験して研究室を変えた場合を想定すると、理系学部の多くは修士課程2年+博士課程3年の規定年数5年で学位取得ができるシステムになっています。

学部によっては、あるいは(私のように)学位取得に時間がかかった場合は、5年以上その研究室に在籍することになります。

「研究室が人生とかそんな大げさな。研究してない時間だってあるでしょ」

と思うかもしれません。しかし、学位を取得するには研究を論文にまとめ、査読付き雑誌に載せてもらわねばなりません(一部そうでない学部もあります)。

論文を書けるだけの意味のある研究をするのにはそれなりの時間が必要です。分野にもよりますが、「起きている時間はほとんどラボにいます」状態の研究室も多いです。まさに研究室=人生なのです。

自分が入ろうとしている研究室の環境やメンバーは、自分が5年間、身をおいて研究するに値するかどうかを見極める必要があります。

 

途中で研究室を変えることは経済的、時間的損失を伴う

「研究室が合わなかったら移ればいいじゃないの」と思うかもしれません。

でもこれはかなり時間的なロスを伴います。論文を通すにはそれなりの時間が必要ですが、例えば修士から博士になる時に研究室を変えた場合、

普通の人が5年かかって論文を通すところを3年で仕上げなくてはなりません。

論文を投稿してもすぐに論文が受理されるわけでは無く、内容を精査したり追加実験を要求されたりと時間がかかりますし、論文を書くにも時間がかかりますので、研究に費やせる時間は実質2年強と見積もるべきでしょう(分野によりますが)。新しい研究室に移って2年で分野の背景を理解し、実験に慣れて意味のある結果を出すのは相当厳しいです。

オーバードクターになるか、中途半端な結果でショボい雑誌に投稿することになります。ちなみに私は修士から初めて結局6年かけて論文掲載に至りました (辛かったなぁ)。

 

 

もう一つは経済的な面での不利益です。

博士課程に進学する学生に対して研究活動を奨励する目的、また学生の経済的負担を軽減するために日本学術振興会(JSPS)から奨励金が支給される制度があります。

日本学術振興会特別研究員(外国人特別研究員を含む。)が行う研究に交付される特別研究員奨励費は、優れた若手研究者にその研究生活の初期において、自由な発想のもとに主体的に研究課題等を選び、研究に専念する機会を与え、我が国の学術研究の将来を担う創造性に富んだ研究者を育成するため、研究費を補助するものです。

特別研究員奨励費 | 科学研究費助成事業|日本学術振興会

学振特別研究員には修士課程2年生の時から博士課程2年生まで年に一回応募でき、審査に通れば月20万の(実質)生活費が2~3年受け取れます。しかし、審査は結構狭き門で、ある程度研究実績がないと通りません。

で、これはデータに基づいた議論ではなくて恐縮ですが、博士課程で研究室変えた人はかなり不利だと思います。

学振の応募書類には「現在までの研究状況」を書く欄があるのですが、新規に研究を始める場合にはここに書くことがほぼなくなってしまうからです。さらに、研究実績として学会発表も評価の対象になりますが、テーマを変えるとここも発表の機会が減ってしまい、評価が下がってしまいます。

修士から同じ研究室に居る学生が絶対に学振特別研究員に採用されるわけではもちろんありませんが、途中で研究室を変えるのは申請書類の作製においてかなりの不利益を被ることは間違いありません。

 

結論

もちろん合わなかったら研究室は変えるべきなんだけど、

途中で研究室を変えるのは損だから、

変えなくても良いようにしっかり研究室を吟味するべき、というのが今回の記事の内容です。

(というかしてください。

研究が好きなのに学位を諦めなきゃならない学生はもう見たくないんです。

 

予告

明日こそは、ちゃんと(私が考える)研究室選びのコツをお伝えします。

内容としては以下になります。

  • 自分のやりたいことができるラボかどうか
  • 大学、研究機関の規模や質
  • 学位取得要件 〜生物系で学位要件が査読論文2報のところはやめとけ〜
  • ボスの年齢、定年までの年数
  • 研究室の規模 〜ビッグラボと小規模ラボのメリット・デメリット〜
  • スタッフ(特に助教)の人数と研究能力
  • 他研究室との交流があるか
  • 博士課程まで行った学生が学位を取得できているか、進路は?
  • 学生と話した時の感触

 

 

 

ポスドクが考える研究室選びのコツその1(生物・実験系・就活を目指すひと向け)

3月になりましたねー。私の街は今日はかなり冷え込んでいます。

寒いのでラボからの帰りが辛かったです。早く暖かくなってー。

 

3月といえば、そろそろ研究室訪問を始める学部生が出始める時期では無いかと思います。願書の締め切りは6月くらいのところが多いと思いますが早いところは4月からすでに書類提出が始まりますね!願書の提出までにじっくり研究室を見比べたいところです。

 

研究専門機関はともかく、大学だと2月は学位・修論・卒論審査とか入試とかでてんてこ舞いなので、そのへんが一段落ついた3月くらいからが、

研究室訪問にはちょうどいいと思います。

 私が学部生だった頃は、

「どうしよう…研究室訪問のメール、いつ出したら良いんだろう汗」

って悩んでいましたが、3月に入った後なら、大学の先生もだいぶ余裕が出てきていると思いますのでおすすめです。

そこで、今日は、昨日のエントリーでもちょっと触れましたが、研究室選びのコツについて書いていきたいと思います。今日のエントリーは院試を控えた学部生向けのものです。

 

tsunapon.hatenablog.com

 

何を目的に院試を受けるかをはっきりさせる

「大学院入試を受けよう!」と思ったら、

たとえ学部からそのまま持ち上がりで大学院に上がる人も、なぜ院試をうけるのかを一度考えてみると良いと思います。大学院を卒業したら、どうしたいのか?

就職をしたいのか、そのまま博士課程に進みたいのか、

博士課程に行く場合には、研究者になる覚悟があるのか?

 

それによって、選ぶ研究室は変わってきます。

はっきり言って、生物系研究室の学生の就活が成功するかどうかは、

修士でも博士でも、研究室の影響を多分に受けます。

将来、あなたが理系就職をして研究職につきたいなら、

興味あるテーマを諦めてでも就職に有利な研究室を選ぶべきです。

 

就職に有利な研究室って?

では、就職に有利な研究室とはどんな研究室なのでしょうか?

生物系研究室の学生の就職先 (研究職)は、食品、製薬、化粧品会社などが主となっています。どんな企業に入りたいかによっても選択する研究室は変わってきます。

 

食品会社に入りたいなら、会社とコネがある研究室を!

食品会社を希望する人は、農学部系の院を受けることを勧めます。

農学部は食とのつながりが強い学部で、食品会社の就活のノウハウを持った研究室が多い印象があります。

食品会社主催の説明会なども頻繁に行われているので、食品会社を目指す人にはうってつけです。

中には、特定の食品会社と共同研究していて、

コンスタントに卒業生を食品会社に送り出しているところもあります。

インターネットを駆使して大学内のシンポジウムなどを見ていると、

たまに研究室主催で特定の会社を呼んで講演会が行われています。

こういうところは、食品に対する研究テーマの関わりも深い場合が多く、

食品会社にエントリーシートが出しやすい企業だといえるでしょう。

 

製薬・化粧品会社を狙うなら、マウス屋さん、細胞屋さんと構造屋さんが有利!

製薬企業、化粧品会社に入りたい人は、

マウスか動物細胞を扱っている研究室を選びましょう。

周りの内定者を見ていると、企業は、修士にも意外と即戦力を期待していて、

「あんまり教えなくても細胞培養くらいできてほしい」

と思っている気がします。

(私は人事じゃないので実際どうなのかはわかりませんが、細胞培養経験、マウスの扱いの経験がある人は就活強いです。)

製薬を狙うなら、なるべく腫瘍関係の研究室を選ぶべきです。

製薬会社は特に博士学生の場合、欲しい人材の出身分野を絞っている場合があります。

生物系一般で募集している場合でも、今年はがん治療に関連する学生のみ採用すると社内で決まっている場合があります。

エントリーシートをパスして面接会場で就活生と話すとわかります。

「あ、神経系しか呼ばれてない」とか、「みんな腫瘍形成絡みだ」とか。

そういった場合に、多くの企業が幅広く求めている人材は、やっぱり腫瘍形成の知識を持った人材のような気がします。

 

後、製薬系で強いと思うのは「構造生物学」の研究室の学生です。

企業は、「タンパク質を結晶化して構造を解析するスキル」を求めているようです。

構造屋さんは主に大腸菌を扱っていますが、細胞培養の経験のある人と遜色ない、あるいはそれ以上に就活に強い印象を受けます。

 

卒業生の就職先は絶対にチェックする

書き忘れるところでした。これはめちゃ重要です。

卒業生がどこの企業に就職しているか?

安定的に良い企業に学生を入れている研究室はおすすめです。

一方、良い企業に行っている学生もいるけど一握りだけ、

みたいな研究室は、たまたま飛び抜けて優秀な学生が就活に成功した可能性が高いです。まぁ、入ってみるまでわからないんですけどね。

 

就活を目指す人にあまりお勧めできない研究室

こっから先はもしかすると、この分野の研究主催者に怒られちゃうかもしれないのでこっそり教えるのですが。

もし就職したいなら、どんなに研究テーマが魅力的でも、

  • ゼブラフィッシュ・メダカ
  • ハエ
  • 線虫
  • 酵母

などの無脊椎動物や下等生物を扱う研究室はお勧めしません。かなり就職には不利です。

私の知り合いのこの分野の人達はかなり苦戦しています。

大きな食品、製薬、化粧品会社は大学のネームバリューにかかわらず苦しいです。

この辺の生物を扱う人は、DNAワークの能力は高いのですが、

DNAの扱いが常識レベルまで一般化した現在、DNAワークに秀でていることは就活において全く強みになりません。

ゲノム編集なんかの登場で、今後どうなるかはわかりませんが、

今現在の周囲の様子を見るに、避けといたほうが無難かなー、と思います。

 

きょうはここまで

本当はアカポス向けの研究室選びについても書きたかったのですが、

明日も早いので今日は、就活を目指す人向けの紹介で終わろうと思います!

アカポス向けは、明日書きたいと思います。

少しでも研究室選びで迷っている皆さんのお役に立てれば幸いです。

 

 

 

 

 

 

 

 

研究者になれるかどうかは研究室選びにかかっている 〜学生のことを考えてくれる研究室選びのすすめ〜

この記事は、はてな匿名ダイアリーに投稿された記事

「研究に向いてない学生には全力で就職活動をさせたほうがいいと思うよマジで」

http://anond.hatelabo.jp/20160228102915

を読んで、書こうと決めた記事である。

ちなみに私は学位取得後数年以内の駆け出しの基礎生物学研究者であり、

元増田の意見には批判的な立場である。

ただ、私がこの記事でもっとも主張したいことは、

「元増田のような人が主催する研究室に入ると研究者になれる確立が低くなるよ」

という警鐘である。

まぁ一言で表すなら、「学生のことを考えてくれる研究室を選びなさいよ」と。

 

以下に元記事の概要と、私の意見をまとめる。

 

「元記事の概要」

元増田の人物像だが、理系研究室の研究者のようだ。

学生を指導する立場にあるようなのでポスドク助教かな。

あまり考えたくはないが、教授かもしれない。

 

元増田の問題提起

元増田は、研究に向いていない学生には就活を勧めるべきだと考えているようだ。

正確には、「元増田が研究に向いていないと考える学生には」なわけだが。

研究が向いていない学生とは、元増田によれば、

 

・先行研究を調べた上で立てている「問い」であるかどうか.まだ調べてない段階であっても,調べようという意識があるかどうか.

そいつの心のなかで,その「問い」が切実なものであるか.つまり本当に心の底から「知りたい」「明らかにしたい」と思って言っているかどうか.

 

という「問い」がしっかりしていない学生だそうだ。

私が元記事を読んで解釈する限り、

 「先行研究を調べる努力を怠る学生」

 「研究テーマの問いに対して興味や熱い情熱を持てない学生」

を元増田は「研究が向いていない」と評価しており、こういう特徴のある学生は、

指導により変わらないと思っているらしい。

 

みんなの反応

ブクマコメントは元増田に同意している人にスターが集まっている印象がある。

どうやら、

「人が研究に向いているか向いていないかは第三者が判断できる」

「研究に向いていないには指導してもあまり能力が伸びない」

と考えている人はおおそうである。

一部に「自分は研究者には向いていなかった」という体験談や、

「ここで元増田が挙げている能力は民間企業でも要求される」

といった指摘も。

 

「私の意見」

まず、この問題には分野の特性も関わっていると思う。

私は基礎生物学の世界しか知らないので、

その世界の人として意見を述べる。

私は、研究に向き不向きはあるかもしれないけれど、

それは他人に指摘されるものではないと思っている。

本人が自覚して「研究向いてないなぁ」と思って就職を選ぶのは勝手だ。

でも、他人、特に研究指導者に当たる人が「君、研究向いてないよ」というのは

絶対に避けるべきだと思っている。

「研究に向いていない」という指導者の主観が間違いである可能性は十分にあるのだ。

事実、元増田の言う「先行研究の調査能力」と「問題設定能力」は、

論文を複数読む作業を繰り返すことで十分に伸ばすことができる。

M1で言われたことをやるだけのひよっこだった私が

学振とって論文通して学位とって助成金とってるんだから間違いない。

 

「学生に就活を勧めるのは非常に良いことだと思うが、民間企業はおちこぼれ研究者の受け皿ではない」

私は、個人的には、元増田は生物系研究者であってほしくないと思っている。

工学とかに比べると生物系は就職が大変なので、気軽に就職を全力で勧めているとしたら

それは全然学生のことを考えていないなーと思う。

一方で、どんな研究者でも就活をしてみるのはいいことだと思うし、

研究主催者も学生に就活を勧めてみるべきだとも思っている。

 

就活のメリット

私は修士の時に就活を経験したが、

エントリーシートや面接対策のために、

「自分の研究が企業にとってどういう意味を持つか?」を真剣に考えた。

それによって自分の研究分野を客観的に見ることができたことは非常に有益だった。

また、大学教員コース(いわゆるアカポス)以外の世界を検討してみるのは、

単純に世界を広げる意味でいいことだと思う。

私は就活を通して「やっぱ私民間無理wwww」って実感したので、

研究に対するモチベーションもだいぶ上がった。

一方、就活してみて「あれ、これって自分に向いているかも?」と思う学生も

中にはいるだろう。

だから、「就活もしてみたら?」とアドバイスすることは、

学生、研究室双方にとって非常にいいことだと思う。

 

研究に向かないという理由で就活を勧めるのは間違っている

但し、「君は研究が向いていないから就活しろ」というのは

全く意味が異なる。

この意見には、「学生を指導する手間を掛けたくない、

企業でしっかり指導してもらって、そこで羽ばたいてくれればラッキー☆」

という思いが透けて見える。

 

私の意見では、もちろん企業も人材育成にはリソースを割くべきだが、

本来教育機関であるのは寧ろ大学のほうだ。

なぜ企業は「御社のプロダクトや社風が魅力的だから」という学生ではなく

「研究に向いていないから」などという後ろ向きな理由で就職を選んだ学生を

押し付けられなければいけないのか。

この増田は利己的で他人の迷惑や学生の幸せを考えない研究者のように

私には思えてしまう。。

理想的なのは、

「就活もやってみたら、〜〜みたいなメリットがあるし、

きみの〜〜なところは企業に向いているかもよ?」とアドバイスすることだ。

なお、もしも指導者の立場で学生に研究よりも就活のほうが向かないと思っていたにせよ、

「君は研究に向いていない」ということには全く意味が無い。

学生自らに「自分は企業の方が向いているな」と気づかせることこそが教育だ。

もちろん理想論ではあるが。

 

 

「研究者になれるかなれないかは、研究室選びでだいたい決まる」

私が思うのは、元増田が仮に研究室主催者だった場合、

(そう信じたくは無いがたとえそうだったとして、)

ここの学生はかなりきっついだろうなーと思うのだ。

少なくとも私がM1でここの学生になってたら、多分私は学位取得まで至らなかったろう。

 

元増田は学生の素質として、

 

「先行研究を,調べようという意識があること

研究課題を心から「知りたい」「明らかにしたい」と思って言っていること.」

 

を要求している。

(私はこれは素質ではなく、指導によって伸びる部分だと思っている。

このエントリーに興味を持つ人が居たなら、そのあたりの意見も別に書きたいと思う。)

つまり、この素質を持っていない学生に対しては教育の仕方がわからないはずだ。

多分、かなり優秀な大学の研究者なのだろう。

黙っていてもこういう素質を持った学生が入ってきて、スクリーニングできる環境にあるのは

すごく指導者としては幸運なことだ。

 

 

しかし、万が一実力が伴わない学生が入ってきたら、

多分その学生は学位取得できないだろう。

だって、学生に「素質」として求めているレベルが高過ぎて、

「素質のない」その学生には十分な指導が行えない可能性が高いから。

しかも元増田は例に上げたような能力は「伸びない」と思っているわけで。

万が一博士課程に進んで、そしてうまく論文が書けなかった場合、

「だからあの時就職しろって言ったのに~。」

とか言われて指導放棄されるところまで容易に想像がつくし、

同じような状況で志半ばで辞めていった同士を私は二人ほど知っている。

機会があれば書きたいと思うが、こういう状況になった場合、

ハラスメント相談室を使っても学位取得は絶望的だ。

 

「結論として研究主催者は取りたい人物像を明記すべき」

だから私は提言する。強く提言する。

元増田みたいな考え方の人は、

研究室のウェブサイトのトップに、

「当研究室は、先行研究について調べようという意識の足りない学生、

および自分で本気で知りたい研究課題を設定できない学生には

全力で就職活動をすすめております。」

と書くべきだと。

「注文の多い研究室」にはドン引きする人もいるかもしれないが、

結果的には学生にとっても研究主催者にとってもwinwinの関係が築けるだろう。

意識の高い学生しか来ないだろうし、

研究課題設定や論文読解能力に不安のある学生は他の研究室を選ぶだろう。

 

「学生は研究室選びの際に構成員の研究スタイルについて十分に研究すべき」

此処から先は、院への進学を考えている学生、

研究室選びを控えた学部生や院試受験生には特に読んでいただきたいところだ。

 

前の項目で「注文の多い研究室」を提言させていただいたが、

実際には上記のようなことをウェブサイトに掲げている研究室を

私は見たことがない。

それはそうだろう、どの教授だって学生は欲しいのだ。

学位取得にこぎつける人が少なくても、門戸は広いほうが良い。

 

だから、研究室を選ぶ際には、魅力的な研究テーマも大事なのだが、

「研究室の雰囲気」や「教授や助教の指導能力」を注意してみるべきだと思う。

例えば、「今現在提示できる研究テーマにはどんなものがあるか?」を教授に聞いてみるのも良い。

研究室の構成員に「私が数年後に論文書くって、イメージ出来ないんですよね」

とか不安を打ち明けてみるのも良い。

私なら「いやー、私も修士の時はそうだったよー。でも論文をたくさん読むうちに、

書き方が分かってくるし、うちの教授は英語すごいうまいからちゃんと添削してくれるよ」

って答えると思う。

うちの教授も、ぶっきらぼうだが、「大丈夫ですよ~、ちゃんと指導します」って言うと思う。

そしてそういう研究室で、自分の能力を伸ばし、苦手を克服して、

一人前の研究者になっていって欲しい。

 

「最後に」

研究に向いているか向いていないかは、

最後まで諦めずに研究に取り組んだ人にしか分からないと思う。

ただ、研究室選びを間違えてしまった学生は、「研究を続けたい」という意志とは裏はらに、

上司の指導放棄によって学位取得を諦めなければならなくなる

そうならないためにも、

早めに受験する大学院を決めて、研究室をじっくり訪問することを

大学院入試を控えた学生さんたちにはおすすめしておく。

 

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