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つなぽんのブログ

生物学者♀のたまごつなぽんのポスドク日記。

研究者になれるかどうかは研究室選びにかかっている 〜学生のことを考えてくれる研究室選びのすすめ〜

研究室

この記事は、はてな匿名ダイアリーに投稿された記事

「研究に向いてない学生には全力で就職活動をさせたほうがいいと思うよマジで」

http://anond.hatelabo.jp/20160228102915

を読んで、書こうと決めた記事である。

ちなみに私は学位取得後数年以内の駆け出しの基礎生物学研究者であり、

元増田の意見には批判的な立場である。

ただ、私がこの記事でもっとも主張したいことは、

「元増田のような人が主催する研究室に入ると研究者になれる確立が低くなるよ」

という警鐘である。

まぁ一言で表すなら、「学生のことを考えてくれる研究室を選びなさいよ」と。

 

以下に元記事の概要と、私の意見をまとめる。

 

「元記事の概要」

元増田の人物像だが、理系研究室の研究者のようだ。

学生を指導する立場にあるようなのでポスドク助教かな。

あまり考えたくはないが、教授かもしれない。

 

元増田の問題提起

元増田は、研究に向いていない学生には就活を勧めるべきだと考えているようだ。

正確には、「元増田が研究に向いていないと考える学生には」なわけだが。

研究が向いていない学生とは、元増田によれば、

 

・先行研究を調べた上で立てている「問い」であるかどうか.まだ調べてない段階であっても,調べようという意識があるかどうか.

そいつの心のなかで,その「問い」が切実なものであるか.つまり本当に心の底から「知りたい」「明らかにしたい」と思って言っているかどうか.

 

という「問い」がしっかりしていない学生だそうだ。

私が元記事を読んで解釈する限り、

 「先行研究を調べる努力を怠る学生」

 「研究テーマの問いに対して興味や熱い情熱を持てない学生」

を元増田は「研究が向いていない」と評価しており、こういう特徴のある学生は、

指導により変わらないと思っているらしい。

 

みんなの反応

ブクマコメントは元増田に同意している人にスターが集まっている印象がある。

どうやら、

「人が研究に向いているか向いていないかは第三者が判断できる」

「研究に向いていないには指導してもあまり能力が伸びない」

と考えている人はおおそうである。

一部に「自分は研究者には向いていなかった」という体験談や、

「ここで元増田が挙げている能力は民間企業でも要求される」

といった指摘も。

 

「私の意見」

まず、この問題には分野の特性も関わっていると思う。

私は基礎生物学の世界しか知らないので、

その世界の人として意見を述べる。

私は、研究に向き不向きはあるかもしれないけれど、

それは他人に指摘されるものではないと思っている。

本人が自覚して「研究向いてないなぁ」と思って就職を選ぶのは勝手だ。

でも、他人、特に研究指導者に当たる人が「君、研究向いてないよ」というのは

絶対に避けるべきだと思っている。

「研究に向いていない」という指導者の主観が間違いである可能性は十分にあるのだ。

事実、元増田の言う「先行研究の調査能力」と「問題設定能力」は、

論文を複数読む作業を繰り返すことで十分に伸ばすことができる。

M1で言われたことをやるだけのひよっこだった私が

学振とって論文通して学位とって助成金とってるんだから間違いない。

 

「学生に就活を勧めるのは非常に良いことだと思うが、民間企業はおちこぼれ研究者の受け皿ではない」

私は、個人的には、元増田は生物系研究者であってほしくないと思っている。

工学とかに比べると生物系は就職が大変なので、気軽に就職を全力で勧めているとしたら

それは全然学生のことを考えていないなーと思う。

一方で、どんな研究者でも就活をしてみるのはいいことだと思うし、

研究主催者も学生に就活を勧めてみるべきだとも思っている。

 

就活のメリット

私は修士の時に就活を経験したが、

エントリーシートや面接対策のために、

「自分の研究が企業にとってどういう意味を持つか?」を真剣に考えた。

それによって自分の研究分野を客観的に見ることができたことは非常に有益だった。

また、大学教員コース(いわゆるアカポス)以外の世界を検討してみるのは、

単純に世界を広げる意味でいいことだと思う。

私は就活を通して「やっぱ私民間無理wwww」って実感したので、

研究に対するモチベーションもだいぶ上がった。

一方、就活してみて「あれ、これって自分に向いているかも?」と思う学生も

中にはいるだろう。

だから、「就活もしてみたら?」とアドバイスすることは、

学生、研究室双方にとって非常にいいことだと思う。

 

研究に向かないという理由で就活を勧めるのは間違っている

但し、「君は研究が向いていないから就活しろ」というのは

全く意味が異なる。

この意見には、「学生を指導する手間を掛けたくない、

企業でしっかり指導してもらって、そこで羽ばたいてくれればラッキー☆」

という思いが透けて見える。

 

私の意見では、もちろん企業も人材育成にはリソースを割くべきだが、

本来教育機関であるのは寧ろ大学のほうだ。

なぜ企業は「御社のプロダクトや社風が魅力的だから」という学生ではなく

「研究に向いていないから」などという後ろ向きな理由で就職を選んだ学生を

押し付けられなければいけないのか。

この増田は利己的で他人の迷惑や学生の幸せを考えない研究者のように

私には思えてしまう。。

理想的なのは、

「就活もやってみたら、〜〜みたいなメリットがあるし、

きみの〜〜なところは企業に向いているかもよ?」とアドバイスすることだ。

なお、もしも指導者の立場で学生に研究よりも就活のほうが向かないと思っていたにせよ、

「君は研究に向いていない」ということには全く意味が無い。

学生自らに「自分は企業の方が向いているな」と気づかせることこそが教育だ。

もちろん理想論ではあるが。

 

 

「研究者になれるかなれないかは、研究室選びでだいたい決まる」

私が思うのは、元増田が仮に研究室主催者だった場合、

(そう信じたくは無いがたとえそうだったとして、)

ここの学生はかなりきっついだろうなーと思うのだ。

少なくとも私がM1でここの学生になってたら、多分私は学位取得まで至らなかったろう。

 

元増田は学生の素質として、

 

「先行研究を,調べようという意識があること

研究課題を心から「知りたい」「明らかにしたい」と思って言っていること.」

 

を要求している。

(私はこれは素質ではなく、指導によって伸びる部分だと思っている。

このエントリーに興味を持つ人が居たなら、そのあたりの意見も別に書きたいと思う。)

つまり、この素質を持っていない学生に対しては教育の仕方がわからないはずだ。

多分、かなり優秀な大学の研究者なのだろう。

黙っていてもこういう素質を持った学生が入ってきて、スクリーニングできる環境にあるのは

すごく指導者としては幸運なことだ。

 

 

しかし、万が一実力が伴わない学生が入ってきたら、

多分その学生は学位取得できないだろう。

だって、学生に「素質」として求めているレベルが高過ぎて、

「素質のない」その学生には十分な指導が行えない可能性が高いから。

しかも元増田は例に上げたような能力は「伸びない」と思っているわけで。

万が一博士課程に進んで、そしてうまく論文が書けなかった場合、

「だからあの時就職しろって言ったのに~。」

とか言われて指導放棄されるところまで容易に想像がつくし、

同じような状況で志半ばで辞めていった同士を私は二人ほど知っている。

機会があれば書きたいと思うが、こういう状況になった場合、

ハラスメント相談室を使っても学位取得は絶望的だ。

 

「結論として研究主催者は取りたい人物像を明記すべき」

だから私は提言する。強く提言する。

元増田みたいな考え方の人は、

研究室のウェブサイトのトップに、

「当研究室は、先行研究について調べようという意識の足りない学生、

および自分で本気で知りたい研究課題を設定できない学生には

全力で就職活動をすすめております。」

と書くべきだと。

「注文の多い研究室」にはドン引きする人もいるかもしれないが、

結果的には学生にとっても研究主催者にとってもwinwinの関係が築けるだろう。

意識の高い学生しか来ないだろうし、

研究課題設定や論文読解能力に不安のある学生は他の研究室を選ぶだろう。

 

「学生は研究室選びの際に構成員の研究スタイルについて十分に研究すべき」

此処から先は、院への進学を考えている学生、

研究室選びを控えた学部生や院試受験生には特に読んでいただきたいところだ。

 

前の項目で「注文の多い研究室」を提言させていただいたが、

実際には上記のようなことをウェブサイトに掲げている研究室を

私は見たことがない。

それはそうだろう、どの教授だって学生は欲しいのだ。

学位取得にこぎつける人が少なくても、門戸は広いほうが良い。

 

だから、研究室を選ぶ際には、魅力的な研究テーマも大事なのだが、

「研究室の雰囲気」や「教授や助教の指導能力」を注意してみるべきだと思う。

例えば、「今現在提示できる研究テーマにはどんなものがあるか?」を教授に聞いてみるのも良い。

研究室の構成員に「私が数年後に論文書くって、イメージ出来ないんですよね」

とか不安を打ち明けてみるのも良い。

私なら「いやー、私も修士の時はそうだったよー。でも論文をたくさん読むうちに、

書き方が分かってくるし、うちの教授は英語すごいうまいからちゃんと添削してくれるよ」

って答えると思う。

うちの教授も、ぶっきらぼうだが、「大丈夫ですよ~、ちゃんと指導します」って言うと思う。

そしてそういう研究室で、自分の能力を伸ばし、苦手を克服して、

一人前の研究者になっていって欲しい。

 

「最後に」

研究に向いているか向いていないかは、

最後まで諦めずに研究に取り組んだ人にしか分からないと思う。

ただ、研究室選びを間違えてしまった学生は、「研究を続けたい」という意志とは裏はらに、

上司の指導放棄によって学位取得を諦めなければならなくなる

そうならないためにも、

早めに受験する大学院を決めて、研究室をじっくり訪問することを

大学院入試を控えた学生さんたちにはおすすめしておく。

 

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