へっぽこポスドクから河野太郎議員へのレスポンス
こんばんは、つなぽんです。
河野太郎議員が、ここ数日、積極的に研究者の意見を政策に反映させるべく、動いてくださっているようです。
Twitterとブログを活用して、我々の意見に真摯に耳を傾けてくださり、
「これで少しでも研究環境がよくなれば…!」と、期待しています。
さて、高名な先生方がすでに河野先生に有益な情報を送っているであろう所僭越ですが、私も、若手の一研究者として、河野先生に現状を伝えるべく、ブログを書くことにしました。
本記事で公開する内容と同じものを、河野先生にはメールで送りましたが、
研究者ではない皆様にもぜひ、若手の学生の現状を知っていただき、研究者の卵たちの力になっていただけたらなぁ、と思います。
運営費交付金の削減が若手研究者と学生にもたらす影響について
学振って何?学振とJSPS
若手の研究者と学生にとって、運営費交付金の削減によって被る不利益は、
まず何と言ってもJSPS, 日本学術振興会による奨励金の問題が大きいです。
(それ以外は、研究室の教授とかが頭を悩ませる問題であって、我々が受ける影響は間接的なもので、問題点もよくわかりません。)
受けられる主な奨励金を次に示します。
学振DC:学生向け。研究生活を支援するための生活費の補助として、月20万円ほどの奨励金が支払われる仕組み。
学振PD:学位を取り立てのポスドク向け。月36万円ほどの奨励金が支払われる仕組み。
学振RA:海外の研究室で修行したい人向け。国によって金額は違うが、生活費が支払われる仕組み。いずれも、申請書を書いて、面接を受けたりして、就活のようなプロセスを経て大体1~3割くらいの人が採用されるシステムになっています(採用率は年によって変わります)。
JSPSからの奨励金は非常に大切
これらは、我々の研究生活を支える生命線です。DCは、同年代の友人達が給料をもらって働いている一方、学費を払い続けていて親の援助を受けている博士課程の学生が経済的に自立できる数少ない手段の一つです。
また、PDやRAは、若手の研究者が、若さを活かして主体的に研究するのに非常に役立っている重要な資金源です。
詳細はリンク先PDFのP.6、研究者援助事業を参照してください
財源は運営費交付金!
そして、この若手研究者を支える奨励金の財源となっているのが、独立行政法人 日本学術振興会の運営費交付金事業です。
次のリンク先は、日本学術振興会のここ数年の予算の内訳です。
グラフの下の茶色い部分が運営費交付金です。H23年には293億円だったものが、H28年度には267億円に減っています。
そして、この減額量を考えるとJSPSも頑張ってくださっているとは思うのですが、
奨励を受けられる人の人数も、ここ数年は減ってきてしまっているのが現状です。
表:ここ5年間の各奨励金を受けた人の人数。
上の表をグラフにまとめたもの。
採用状況 | 特別研究員|日本学術振興会、申請・採用状況 | 海外特別研究員|日本学術振興会
を参考に作製
私が訴えたいのは、どうか、どうかJSPSへの運営費交付金をこれ以上減らさないでほしいのです!
学生に、後ろめたさを感じずに、経済的不安を感じずに研究に打ち込める生活費を!
そして、若手研究者に、早くから主体的に研究に取り組める研究を保証するために!
お願いします。
学生が減ったのに教員が増えたのがおかしいですか?
次に、全然別の話題になるんですが、河野先生がブログ内で
学生数が1万4千人減少したのに対して、教員が4千人弱増加し、職員は2万4千人近く増加しています。
人事管理が計画的に行われていたのでしょうか。
この職員増は非正規で対応せざるを得なかったということではないでしょうか。
また、教員に関しても、年齢構成が高齢化し、若手がポストに就けないということでしょうか。
企業がポスドクを雇用せず、ポスドクの行き場がなくなって、ポストを探す研究者が増えたということでしょうか。
引用元;研究者の皆様へ
と、学生が減ったのに教員が増えた理由を考えていらっしゃいます。
おかしい、と思われる方も多いかもしれませんが、私はあんまり意外に感じませんでした。なぜなら、研究室において学生は労働者だからです。
研究室の業績の主力となっている修士、博士課程の学生
研究室で主に実験しているのは、教授ではありません。
研究室によっては、一番研究室の滞在時間が長いのが学生、なんてこともあるのです。
研究室からでた業績を見てみても、半数が学生が筆頭著者になっている研究室もよくあります。
企業に入ったらOn the job trainingとして給料が貰えそうな仕事を、学生が学費を払ってやっている、それが今の日本の大学です。
当然、タダで、いや、お金を払いながら働いてくれていた労働者がいなくなったら、仕方がないので教員を雇うことにした、という展開は起こりうると思います。(ちなみに、米国の博士課程は給与が支払われるので、お金払って博士課程をしている、と言うとすごく驚かれます。)
これはあくまで仮説ですので、なぜ学生が減って教員と職員が増えたのか、ちゃんと調べるべきだとは思いますが、有り得る話だとは思います。
最後に
正直にいって、いまの若手研究者、特に学生さんはあまりいい待遇とは言えません。例えDCを貰ったとしても、同世代の人達に比べると生活はカツカツなはずです。
その上、雇用契約がないので、労働基準法が適用されません。DENTUなみのブラックな働きをしている学生さんは居るし、その結果心を病んだとしても、労災は出ません。
さらに、学位や卒業といった、人生の重要な切り札を指導教員が握っていて、人間関係によるストレスもかなりあります。
ハラスメント相談室があまり機能していないことは以前、このブログでも触れました。
どうか、どうか、学生さんの待遇が改善されればと願っています。
私は逃げ切りました。でも、逃げ切れなかった友人が何人も居ます。
過酷な環境でも研究がしたい、そういう夢を持って研究室のドアを叩いた人がほとんどです。金銭的にも、体力的にも、精神的にもぼろぼろになっていく後輩を、
もう見たくないのです。
お願いします。
リンク
追記
next49先生が、学生数の減少と教員の増加についての読み応えある記事を書いてくださっていました。
このブログを読む限りでは、大学院生数はむしろ増加しているので、このブログの中で私が書いた「研究の担い手である学生の減少により教員を増員する必要があった」という考えはどうやら的外れだった模様です。すみません。
この10年で減少したのは学部生だったわけですね。