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つなぽんのブログ

生物学者♀のたまごつなぽんのポスドク日記。

阪大はなぜスーパー日本人育成に取り組もうと思ってしまったのか(想像です)

文部科学省主催のCOIプログラムの拠点の一つ、大阪大学のCOIプログラムが

すごく話題になってたので乗っかります。

スーパー日本人、ハピネス社会 などの変な単語の羅列にtwitter騒然となったのですが、本エントリーでは、

大阪大学がなんであんなヤバイ資料を作らなければならなくなってしまったか」

に焦点を絞って私の想像を書きたいと思います。

たぶんね、阪大はあんなヤバヤバなディストピア世界、目指してないと思うんだよ。

ただ、お金が欲しかっただけだと思います。

 

バズの概要

確証はないのですが、今回いきなりこのタイミングでこの「脳マネジメントで潜在能力を発揮できるハピネス社会の実現」という研究プログラムが話題になったのは、

以下に示すプレスリリースが原因なのでは無いかと思います。

www.jst.go.jp

この研究自体はとても素晴らしいものです。今まで大掛かりな装置が必要だった脳波センサーですが、小型化に成功して額に貼って脳波を測定できる装置を開発で来ましたよ、というニュースですね。

被験者の負担軽減に繋がる素晴らしい装置だと思います。

しかし、このサイト、下の方になんか不穏なことが書いてあります。

また、COIプログラムは、社会実装をひとつの目的としており、脳マネジメントの方法の1つとして、将来的には家庭で脳波を測定し、その結果をもとに測定した個人の状態を判断し、個人の状態にあった活性化手段を用いて、個の潜在能力を常に発揮できるシステムの実現を目指しています。

www.jst.go.jp

f:id:tsunapon:20160303034028j:plain

 

漂うディストピア感。。。そして添付された画像。。。この辺が火元では無いかと私は見ています。(違うという情報ありましたらお待ちしてます)

 

で、ここらへんから大阪大学を拠点とする研究プログラム「脳マネジメントで潜在能力を発揮できるハピネス社会の実現のウェブサイトの内容を確認する輩が出てきて、内容があまりにも斬新過ぎて、瞬く間にそのホームページの概要が拡散されて、脳マネジメントで潜在能力を発揮できるハピネス社会の実現」は多くのtwitter民の知るところとなったのです。

 

「脳マネジメントで潜在能力を発揮できるハピネス社会の実現」とは何なのか

スライドの内容を端的に述べると、

  • 装着が簡単な機器を用いて脳波を測定し、ストレスの程度を検出する。
  • 装着が簡単な機器を用いて脳に刺激を送りストレスを軽減し、脳がより効率よく働けるようにする。
  • また、幼少期の教育にも様々な最先端機器を取り入れ、子供の能力と脳波の関係を調べて子供の脳をより効率よく活性化できるようにする。
  • こうして、脳に眠る潜在能力を十分に発揮できる社会を実現する

と言った内容が盛り込まれています。脳の状態を検知して、刺激により脳を活性化して、潜在能力を引き出すと。。。。

どこのロボトミー手術ですか?

 

一次ソースは以下のリンクをご確認ください。

www.coistream.osaka-u.ac.jp

 

COIってなんですか?

そもそもCOIって何?っていう疑問が湧いてくると思うのですが、

COIとは、文部科学省が推進しているプログラムです。

本プログラム(センターオブイノベーション(COI)プログラム)では、COI STREAMのビジョンに沿って、ハイリスクではあるが実用化の期待が大きい異分野融合・連携型の基盤的テーマに対し、集中的な支援を行い、産学が連携する研究開発チームを形成します。 産学連携については研究開発期間全体を通じて持ち寄り方式で運営することとし、全体の状況を踏まえて最適な体制を構築することを基本とします。

概要-センターオブイノベーション(COI)プログラム

だそうです。「ハイリスク」と「産学連携」が今回の騒動を理解する鍵になりそうですね。

 

拠点は阪大以外にも複数存在します。全ての拠点とプログラム詳細については

www.jst.go.jp

をご覧くださいませ。

以下心の声。

 

(真の社会イノベーションとかファブ地球社会とかもう頭がおかしくなりそうだ。。。

ファブ地球社会とは、必要とする全ての人が、自らの感性に基づいて欲しいモノや必要なモノを可視化・デザイン・創作することができる個人の多様性を尊重した社会であり、そのために必要な工夫やノウハウを、インターネットを通じて流通・共有することで、自己充実感や成長感、達成感、連帯感に満ちた生活を送ることができる持続可能な社会です。

ファ!? 日本語で書いて…!ていうかイノベーション入れればいいと思いやがって…)

 

 

なぜこんなわけわからんプログラム「脳マネジメントで潜在能力を発揮できるハピネス社会の実現」が出来上がったのか

「みんな、この資料の何がおかしいと思っているのか」にも興味がありますが、今日はとりあえずこの「脳マネジメントで潜在能力を発揮できるハピネス社会の実現」の資料がいかようにして作られたかを、

想像してみようと思います。

もっと大学の上の方の人なら内情に詳しいと思いますが、何分下っ端なので想像です。でも逆に内情を知っているヒトはこんな記事書いちゃいけないんでしょうね。

私は書きます(研究者空気読めない)。

 

文科省のキーワードをタイトルに入れて予算をgetしたいという思惑

というかまずこの各種COIプログラムのタイトルを見ると、

  • 真の社会イノベーションを実現する革新的「健やか力」創造拠点
  • さりげないセンシングと日常人間ドックで実現する理想自己と家族の絆が導くモチベーション向上社会創生拠点
  • スマートライフケア社会への変革を先導するものづくりオープンイノベーション拠点
  • 活力ある生涯のためのLast 5Xイノベーション拠点
  • 『以心電心』ハピネス共創社会構築拠点
  • 精神的価値が成長する感性イノベーション拠点
  • フロンティア有機システムイノベーション拠点

www.jst.go.jp

何かヤバさが漂っています。もう倒れそうです、私。イノベーションってなんですか。ハピネスってなんですか。なんかちょっと日本語を横文字にして、かっこ良くした感じですか、逆にかっこわるいし意味がわからないです。

 

でも笑わないでください。みんな必死で、大真面目でつけているんです。

COIだけじゃありません、リーディング大学院プログラムなど、文科省が推進してお金を拠出しているプログラムは数多いですが、

プログラム名は大抵、パット見では意味がわからないのです。

「ライフイノベーション

「グリーンイノベーション

文科省はこの英語にしても日本語にしてもよく意味のわからん単語を創出してはキーワードとして大学側に叩きつけてくるわけですね。

で、大学側もそのよくわからないワードに合わせてよくわからないプログラムを組んで学生や教授陣を突き合わせるわけです。

マジお役所仕事です。

その点脳マネジメントで潜在能力を発揮できるハピネス社会の実現」も、多分「ハピネス」というワードを無理やりねじ込んだんですね。

東工大の「『以心電心』ハピネス共創社会構築拠点」にもハピネスが入っているし、多分高ポイントワードだったんでしょう。

 

産学連携の名のもとに、無理やり分野をくっつけあった結果がアレ

リーディング大学院プログラムもそうなんですが、最近の文科省はやたらと「産学連携」、あるいは「産官学連携」を押してきています。

私は理学部に所属していて、世界の理を調べるのが仕事だと思っていたのですが、

理学部にも産学連携の波は押し寄せてきておりまして、

「ねぇ、君の研究、どうヒトの役に立つの?」みたいなことを聞き取り調査で聞かれたりするわけです。

「私、人の役に立ちたくないから理学部に入ったんですよ。私は自分が何者なのか知りたいんです。他人とかかわらない世界で世界の理と戯れていたいんです。正直言って、寿命が伸びてもヒトは幸せにならないと思います。」

とかもう言えない雰囲気が漂っています。産学連携最後の砦、理学部ですら。

 

私はニッコリ作り笑いをしながら

「本研究でメインで扱いますAという分子は、〜〜という病気の原因遺伝子であると考えられています。このアプローチにより種間で保存されたAの機能が解明されると考え、〜〜などのアプローチで研究を進めています」

と答えるわけですが内心では「病気とか知らんがな」と思っているわけです。多分向こうも建前だということは理解していて、きつねとたぬきの化かし合いが行われるわけです。

世界の理を調べる役割はもう天文学科さんに全部お任せして、我々は理学部から医学部か薬学部に移ったほうが良いのかもしれません。さよならPh.D。私は哲学者やめることになるかも。

 

話がそれましたが、正直、今の流れだと産学連携をプログラム計画書に盛り込まないことには、どうやっても研究費を取ってくることは不可能です。

どの大学も、自分の大学の研究の強みを活かして、なんとか強みを持っている、研究成果の出ている研究室同士をうまいこと連携させながら、案をひねり出しているはずです。医学部内の研究室をコラボさせてもインパクトは薄いので、工学部と薬学部とか、分野の全く異なる研究同士を連携させます。

んな無茶な!と思いますが、それでお役所の人たちが大喜びするので仕方ありません。

しかも今回のCOIプログラムには、「リスクが高い」研究内容を要求しています。実現可能性は低くてもいいと言っているわけですね。

誰もがぱっと思いつくようなプログラムではインパクトが薄いと考えた大学は多かったはずです。

 

 

大阪大学

  • 既存の成果の出ている研究室を盛り込む
  • 分野の離れた研究室同士を連携させる
  • リスクの高そうな突拍子もない研究計画でインパクトを狙う

 

ということを主軸に、あのプログラムを作ったのです。おそらく。

結果予算が取れたわけですから、阪大の目論見は成功です。あとは計画したプログラムのうち、自分の研究の発展に寄与しそうな部分をメインに研究を進めていけばいいわけです。

事実、今回発表された小型脳波測定装置、次世代の神経科学の発展に貢献する良い装置のように見えます。(いや、専門外なんで適当なことを言っていますが)。

 

安心してください、みなさん。

ストレス社会においても無理やりストレスをなかったコトにされてボロ布のように使われるディストピアはやって来ませんよ…多分。

 

 

最後に。もう産学連携やめたい。

私は、大学って、商業利益を追求しないところがいいところだと思っているんです。

実は、大学教授が特許撮ったりするの、私はあまり好きではありません。

大学は、公的なお金を使って、誰もが恩恵を享受できるような真理を追求するところだと思っています。だって、商業利益を求めるなら企業と変わらないじゃん。

 

目先の利益にとらわれるんじゃなくて、100年後、200年後の未来を見据えて私たちは基礎研究をやっています。

世界とは何なのか。宇宙とは、人間とは、思考とは。ずっと古来から立ち向かってきた人類の疑問に、理学部は挑み続けています。

どうか、「人の役に立たないことには意味が無い」なんて言わないで。

 

私、あのプレゼン準備するために教授になるんだったら、

死ぬまでポスドクでいいかな。。。。